約20年ほど合唱を経験していてピアノ伴奏に長い間疑問を持っていました。
特に女性合唱では低音系が弱いのでピアノ伴奏がよく使われます。
演奏会などで最初は無伴奏(アカペラ)で心地良いハーモニーを出して歌われていて、
ピアノ伴奏が入った途端に合唱がバラバラになってしまったなどということを
経験されたことはありませんか?
合唱とピアノ伴奏の音程が異なるのが原因のようです。
一般的にピアノは平均律で調律されています。 平均律とはオクターブを12等分して各音程の比率が一定(1.059463...:無限小数)になる音律のことです。 下の表に純正な音程(共鳴する音程)と平均律の音程を比べてみました。 平均律では5度音程と4度音程が2セント以内で純正に非常に近い音程で、 透明なハーモニーが出せます。 ところが長3度音程は14セントと短3度音程は16セント以上離れており、 かなり強烈なうなり(ビート)が出ます。
純正 | 平均律 | 差 | |
---|---|---|---|
5度音程 | 701.95 | 700 | 1.95 |
4度音程 | 498.05 | 500 | 1.95 |
長3度音程 | 386.31 | 400 | 13.69 |
短3度音程 | 316.64 | 300 | 16.64 |
合唱では3度音程がよく使われます。平均律ではどの調でも3度音程にビートが含まれています。 したがってピアノ伴奏を聞きながら歌うと各パートごとにばらばらになった様に聞こえることになります。 平均律に独特の緊張感のあるハーモニーができます。
(セントとは:音の周波数比を対数で表現する方法で、1セントは各半音の100分の一になり、 1オクターブは1200セントになります)
自然なハーモニーができる音律は何が良いのでしょうか。 バッハの時代に使用されていた古典調律を取り上げます。 (音律の詳細はこちらをご覧ください)
まず、ヴェルクマイスター第3法は、 へ長調・イ短調が純正に近いハーモニーが出ます。 また、不均一な音程の並びで調性による変化が明確になります。
次にキルンベルガー第2法を調べてみます。 ハ長調・ト長調・ホ短調・ロ短調は非常に純正に近い透明なハーモニーが出ます。 へ長調も平均律よりは少しよさそうです。
合唱のピアノ伴奏には純正な3度音程が多い「キルンベルガー第2法」がよさそうに思えます。 しかし、ピアノ教室との関連があるのでとりあえず「ヴェルクマイスター第3法」を 取り上げてみることにしました。そしてついにピアノの調律を変更しました。